はてなダイアラー漫画名選 手塚治虫「七色いんこ」−舞台は人間の縮図…ー

タイトル:七色いんこ(ななしょくいんこ)
作者:手塚治虫
出版社:秋田文庫(1〜5巻) →Amazon
    講談社手塚治虫漫画全集(341〜348巻) →Amazon
    (画像は講談社手塚治虫漫画全集の方)
実は結構迷ったんだよね。当初、藤子F不二雄のSF短編集で書き始めていたんだけど藤子さん(id:Fujiko/URL:http://d.hatena.ne.jp/Fujiko/20040418)がいきなり「ドラえもん」なんて王道中の王道を出すもんだから、リセットかけて、手塚治虫でいこうとしたんだけど、「BJ」や「火の鳥」は後から書く人にまかせようかなと、ちょっと通を選んで(思えば「きりひと賛歌」「奇子」でもよかったけど)この本に。

まあ、手塚さんのスタイルの特徴として「スターシステム」というのがありまして、これは要は「全ての登場人物は神(=手塚治虫)の作られたあらゆる世界で、様々な台本を与えられて「役」を演じているに過ぎない」ということなんだけど、それが一番よくでているのではないのかな…とおもって選んでみたというわけ。まさに題材が『舞台』だからねぇ。
話の中にも、神様・手塚治虫のわがままに振り回される主人公「七色いんこ」というそのまんまなシュチュエーションがあったりします。
好きな漫画のパターンとして「ある登場人物の気分にはまりきって共感する」のほかに「登場人物たちがからみあっているそのドラマそのものを楽しむ」パターンっというのがあって、私的に手塚さんはほぼ後者で見ている場合が多いです。「え!この先どうなるの??」とかのどきどき感や「すげーー!」みたいな驚き…やはり「漫画界の神様」というだけありますわ。

あと漫画を熱心に読んでいる人なら解ってくれると思いますが、ある時点までの漫画って読んでいるだけで色々な知識を身につけたり、あるいはそこから新しい分野に入るきっかけを作ったりしていたなあ‥と。これだったら「じゃじゃ馬ならし」ってどんなお話なの?と学校にある図書館の戯曲のコーナーを探してみたり。この知識のうんちくに関しては専門のBJのほうがうまくできているんだけど、盛り込むテクの粗が出る分かえって漫画の持つ威力の大きさを思い知らされます。ああ、なんて恵まれた娯楽持っているんだろうねと、な。

まあ、なんだか漫画一般論みたいな展開になっちまったけど、天才的代役役者にして怪盗の「七色いんこ」とそれを追うライバル千里万里刑事との演劇の名作を下敷きにした連作集にして…な物語、BJとかのメインでは物足りない人にお薦めします。