90年代オタク文化が語る価値観の問題

さて、こうしてみてみると、「るろうに剣心」と「新世紀エヴァンゲリオン」はきわめて近い時期にともにスタートしたことが分かる。

共通の時代背景的なモノを解説するのであれば、それは

『戦後の枠組みの崩壊と新体制の模索』と言えるだろう。

「冷戦構造の崩壊」「自民党一極支配の崩壊」「右肩上がりの経済成長の終焉」「カルト宗教によるテロ」「近代都市を破壊する大災害」がその時代背景にあることと無縁ではない。

そしてこうした「一時代の終わりと、まだ見えない新時代」という雰囲気が、世紀末というシチュエーションの中で徐々に高まりつつあった。

さて次の企画は 2005/11/8 和月伸宏論(前篇):90年代キーワード「不殺」と「新世紀エヴァンゲリオン」「るろうに剣心」の符合
http://d.hatena.ne.jp/otokinoki/20051108/p1

変にこの手の業界に手を出してるのでこの件に関してはあまりいえないけど、あえていえば「戦後民主主義的父性の崩壊」ってのが90年代の一番のキーワードのような気がする。
和月伸宏は失われた父性を過去の罪と罰に求めて回答を出し、庵野秀明は失われた父性の探求の結果、「アンチグレートマザー(負の母性)」という回答を大いなる存在・綾波レイというキャラに預ける事で物語を着地させた。
漫画界レベルでもう一つ言うと小林よしのりが、「ゴーマニズム宣言」にてその戦後民主主義的父性の欺瞞を暴き、これらの物語のレールを作った事に(これは二人のインタビュー等を検証すれば透けて見えるはずだ)注目するともっとわかりやすいかもしれない。
この考察鋭すぎて怖い部分があるのだけど、一つ抜けてるところがあれば、80年代の「変態的文化」にもう戦後民主主義的父性の崩壊の序章が始まってると言うところかな。あの時点でのオタク文化は完全にカウンターカルチャーであり、子供の世界に洗脳をはじめようという段階(例えば富野由悠季さん率いるガンダムシリーズとか、ロリコンものとかね)であった事に目をつけておくことかな。そうすると、大塚英志のスタンスがそんなにゲリラ的でない、むしろ古典的な前時代的対抗意識で物を書いている事が見えてくると思う。(ちょっとかわった風に見えるが、彼の手法は完全に全共闘時代の夢をオタク界に再現しているに過ぎない)実はロリコン主義も日本普遍の文化などでなく、この時代の空気(まあ、宮崎駿もある意味戦犯だよね)によって作られたものではないかと思うのである。これは日本のエロ歴史をたどれば、そんなにロリコン社会でない事がわかると思う。(そんなもの辿る奴がいるのかという説もあるがな)

でも、この二人の対談かあ。面白いかもね。